あの日の約束

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「あ、これ雨降るなあ」 ある夏の晴れて暑い日の昼下がり。 大学内のカフェテリアのテラス席で空を見上げていた僕は、誰に伝える訳でもなく、ポツリとそう呟いた。 隣に座っていた大学の同じサークルの仲間、木下哲也は関心なさそうに、「あ、そうなん?」と応じてくれたけど、他の奴らはノーリアクション。 皆あまり夕立には関心なさそうだ。 まあそれもそうか。 今これだけいい天気なんだし、降ったとしてもすぐ止むだろう。 降ったとしても、今目の前にあるカフェオレを急いで飲み終えてテラス席を後にすればいいだけだ。 その後もしばらく降ったとしても、カフェテリアの店内か校舎内で雨宿りしてればいい。 何しろ時間に縛られることのない大学生。 雨宿りをする時間はたっぷりある。 しばらくすると、本当にポツリポツリとやってきた。 「わーマジかよ。傘持ってきてねーし」 「天気予報、雨降るなんて言ってなかったじゃん」 各々ボヤきながら残っていたドリンクを慌ててて飲み干し、トレイを持って返却口に急ぐ。 さっき、雨降るよって、僕言ったんだけどな。 木下以外は本当に聞いてなかったのか、それとも信じてなかったのか。 まあそれはどうでもいい。 僕は大学で、ようやくぼっちにならなくて済む居場所を見つけたんだ。 このサークルの仲間の隅っこに居られるだけでも十分だ。 僕は地方高校から一人、この少しレベルの高い大学に進学した。 高校時代から大人しく、勉強もそんなにできる方じゃなかった僕。 そんな僕がこの大学に頑張って進学したのは、全国でも少ない気象学を学べる大学だったから。 でも僕は、子供の頃から空や自然現象に関心が高かったわけじゃない。 むしろ家の中で無気力にぼーっとしてる子だった。 じゃあそんな僕が何故気象学を勉強したいと思ったかというと、これには訳がありまして…。
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