微熱未満の恋

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「そんなのバレなきゃ問題ないでしょ」 「後ろめたいことは大抵バレるんだよ。お前がバイトしていたのも簡単にバレただろうが」 「あーそうっスね。バレました」 「お前も俺と同じくらいの歳になればわかるさ。俺だってお前の歳の頃はそうだった。怖いものなんかないと思っていた」  そうだ。若い頃は相手の年齢問わず、遊びまくっていた。責任なんて子供の自分にはないと知っていたから。相手が破滅しようがどうでもいい。  一度妻子持ちの男と遊んで軽く修羅場になったことがあったが、俺は金をもらってそれで終了。相手の男に対しての気持ちもないし、むしろ小遣い稼ぎができて幸運だとも思っていた。 「俺は自分さえよければそれでよかったんだ」 「そんなこと言わないでくださいよ……」 「いや、これが俺が本心だから」 「本心って」 「本心っていうか、俺そのものだな。遊びまくっていた過去も俺の一部だし、真面目くさった態度で保健室の先生やってる今の俺も俺の一部だ。過去を反省する気はないが、大人になって色々もまれて、ある程度の分別はつくようになった」 「……オレも大人になったら、あと三年? 待てば、先生の気持ちがわかるんですか?」 「さあな、ハタチ超えたとしても理解できるかどうかはお前次第だ。俺から見たらお前らも大学生のガキも変わんねえ」 「先生……オレ、先生の話聞いても、やっぱり先生と――」 「……俺の気持ちも理解してくれ」 「先生……?」 「柴田、もっとこっち来い」  ソファーで縮こまっている柴田に声をかける。  柴田は腰を上げ、一歩ずつ俺に近づいてくる。  俺の目の前に立つと、柴田はどこか上の空でスラックスのポケットに手を出し入れしていた。 「柴田、お前三年待てるか?」 「三年……」 「先に断っておく、即答するなよ。お前が三年待って成人したら、考えてやらなくもない。お前はそれまでの間、俺への気持ちを持ち続けられるのか? できないだろう?」 「できますっ!」 「……即答するなって言ったろ」 「できます! オレ、先生のこと、ほんとに、本当に好きなんです。先生が男だからとか関係ない。オレは織弥先生だから好きなんです!」 「おいこら、名前で呼ぶなって――」 「織弥先生……いや、織弥さん」 「……クソガキが」 「織弥さん。オレ、大人になるまで先生のこと想い続けます。だから先生も、オレを、オレのことを……」
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