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「あいつは俺を美化しているだけだ。周りに女がいないから俺で代用しようとしているだけだ。ただ夢を見ているだけなんだよ」
俺に好きだと告白した柴田の瞳は高揚して……いたっけ。
あれ、どうだっけな。
記憶が曖昧になっている。
「織弥ちゃん。それであんたは何て答えたのよ」
「お前の想いには応えられないって答えた」
「それってさあ、織弥ちゃん。どういう意図で言ったの?」
「意図だあ?」
「断る理由はいくつかあるでしょ。単に好みじゃないとか、そもそも相手がノンケの時点で望みがないとか」
「ああ、それねえ。あいつがクソガキだからだ」
「なるほどね、相手が未成年だから断ったのね」
「そりゃそうだろう」
「じゃあさ織弥ちゃん。相手が成人していたらOKしていたの?」
「……さあ」
考えたこともなかった。
「さあって何よ」
「それすら考えてなかったってことだ」
「なら考えてみて。相手の子がもしハタチ超えていて、あんた好みの男だったら応じていたのかしら」
「あのクソガキがか……」
「この際年齢は無視して、どうなのよ、ぶっちゃけ。良い男なの?」
「……悪くはない。年のわりに言動が幼いが、顔と身体は文句ない」
「ならその子が大人になるまで待ってみたら? 案外良いパートナーになれるかもよ」
「おいおい冗談だろ。相手は俺の生徒だぜ」
「あんたはただの保健室の先生でしょ」
「俺の学校の生徒って意味だ」
「同じでしょ」
「節操なしの俺だってノンケに手を出す気はさらさらないさ」
「……織弥ちゃん。大人になったわね」
「大人じゃねえよ。大人だったらもっときっぱり断るわ」
「そうそう断って――え、断ってないの?」
「断った。断ったが……」
「もしかして、絆されちゃった?」
「さあ。どうかな……」
柴田が俺に告白してから今日で一週間近く経つ。その間、柴田は一度も保健室に来なかった。
俺にフラれたことに傷心したままなのか、顔を出しづらいのか、その理由はわからない。ただ登校はしているようだ。その事実が妙に癪にさわった。
「とにかく……」
「なあ、ママ。俺はどうすればいい?」
「あんたの心に素直になりなさい」
「俺の心ねえ……」
「それが難しいなら、さっさと特定の相手見つけなさい」
「俺は遊んでるくらいがちょうどいいんだよ。そういうママはどうだ? 決まった相手いんの?」
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