二枚目 日常

1/2
前へ
/7ページ
次へ

二枚目 日常

 とある一軒家。 「......」  沈黙が流れる食卓。日常と化した異常な食卓。向かい合わせに座る母親と娘。中学生くらいの年齢だが、顔立ちから何から妙に大人びている。  少女の名は「カガミ」という。  十年前にカガミの父親が亡くなってから、食事の時はいつもこうだ。  ろくな挨拶もせず、無言で食事に手を付ける。  「食べる」というより「入れる」カガミ。宝物の手鏡をすぐ横に置いて、お皿も見ずに料理を口に運ぶ。 「ごちそうさま......」  独り言のように言ったあと、食器も片付けずに二階の自分の部屋に戻る。 「あー息苦しい。実の母親との食卓がこんなにも苦痛なんて、異常ね」  部屋に入ったカガミは、ため息と一緒にそう呟いた。  もともと会話の少ない家庭ではあったものの、手鏡がカガミの宝物になってからは、余計に家庭が崩れてきている。  カガミは何時如何なるときも、肌身離さず手鏡を持ち歩き、少しでも時間があればそれを見つめている。  自分でも異常だと自覚しつつも、やめられないのが現状である。  ふぅ、とカガミが息を吐き出す。 「今日は怒られる前に逃げてきたけど、最近お母さんピリピリしてるのよね。私の鏡好きに対してイライラしてるっぽいけど、なんでそんなに怒ってるのか訳がわからない」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加