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二枚目 日常
とある一軒家。
「......」
沈黙が流れる食卓。日常と化した異常な食卓。向かい合わせに座る母親と娘。中学生くらいの年齢だが、顔立ちから何から妙に大人びている。
少女の名は「カガミ」という。
十年前にカガミの父親が亡くなってから、食事の時はいつもこうだ。
ろくな挨拶もせず、無言で食事に手を付ける。
「食べる」というより「入れる」カガミ。宝物の手鏡をすぐ横に置いて、お皿も見ずに料理を口に運ぶ。
「ごちそうさま......」
独り言のように言ったあと、食器も片付けずに二階の自分の部屋に戻る。
「あー息苦しい。実の母親との食卓がこんなにも苦痛なんて、異常ね」
部屋に入ったカガミは、ため息と一緒にそう呟いた。
もともと会話の少ない家庭ではあったものの、手鏡がカガミの宝物になってからは、余計に家庭が崩れてきている。
カガミは何時如何なるときも、肌身離さず手鏡を持ち歩き、少しでも時間があればそれを見つめている。
自分でも異常だと自覚しつつも、やめられないのが現状である。
ふぅ、とカガミが息を吐き出す。
「今日は怒られる前に逃げてきたけど、最近お母さんピリピリしてるのよね。私の鏡好きに対してイライラしてるっぽいけど、なんでそんなに怒ってるのか訳がわからない」
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