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振り返ると、可愛らしい顔立ちの少し小柄な男子が走ってくるところだった。
彼は合田翔という仁岡の友だちのようだった。
「なつのちゃんか。
はじめまして。
仁岡と同じ小学校なら、同じ中学だね。
僕のことは、翔でいいよ」
いつも皮肉っぽい仁岡と違い、翔の笑顔は、さわやかだった。
「合田翔よ」
と案の定、うさぎがしゃべり出す。
「これはお前の妄想だ。
安心して我に従え」
だが、翔は、うさぎを見もしない。
「二人とも、入学したら、よろしく」
「合田翔、我に従え」
「じゃ、仁岡、なつのちゃん。また」
塾の時間だという翔は軽やかに走っていってしまった。
「我に……」
うさぎの声は小さくなり、聞こえなくなる。
「元気出して、うさぎ」
「元気出せよ、うさぎ」
ふたりで、なんとなくなぐさめた。
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