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なつのと仁岡の後ろ。
そして、なつのと翔の後ろにも、ぼんやりとした人影がある。
「心霊写真だっ」
恵津子たちが騒いだ。
「それが若君たちだってば」
となつのは笑う。
「わ、私だけが写っておらんっ」
と騒ぐうさぎに、
「写ってるじゃん」
となつのは自分の腕に抱えられているうさぎを指差して言った。
「いや、そうでなくてっ。
こんな大発見に立ち会ったのに。
ああっ」
とうさぎは、うさぎであることを嘆いている。
まだ上がれてはいない十郎太と直次に手を振り、なつのたちは洞穴を出た。
「響殿によろしく」
十郎太がちょっとだけ寂しげに言った。
なつのは大きく手を振る。
側にいる仁岡に言った。
「春休みの最初にさ。
これは小学校の春休みか、中学校の春休みかってもめてたけど。
どちらでもなかったね」
「え?」
「なんだか、戦国時代な春休みだったよ」
となつの笑う。
みんなについて浜に戻りかけたなつのだったが、ふと、足を止め、振り返る。
満潮になったら見えなくなってしまうのかもしれない洞穴の入り口に向かい、頭を下げた。
「若君、十郎太さん。
素敵な春休みをありがとうございました」
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