さようなら、うさぎさん

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 桜は散り、もう、道路に少し花びらが残っているくらいになってしまったその日。  人生で一番成長する三年間に着るため、ぶかぶかに作ってある制服を着て、なつのたちは入学式に向かっていた。 「見て」 と祭里が言う。  登校路にある高校の斜面に桜色の美しい花々が植えられていた。 「桜散っちゃったけど。  まるで、あの花が桜みたいね」 「あとで写真撮ろうよっ」 と恵津子と祭里が喜ぶ。 「あれが『我に従え』の正体だよ」  ふいにした声に、ひゃっ、と振り向くと、朝からさわやかな笑顔の岡田が立っていた。 「みんな、入学おめでとう。  今度、みんなでお店においで。  僕と亜紀さんがおごってあげるから」  やったあっ、と祭里が真っ先に声を上げた。  あのあと、真柴直次やその家臣たちの墓の発見のおかげで、岡田と桐生先生はけっこう大変だったようなのだ。  世話になった岡田に、両親たちも頭を下げていた。 「岡田さん、あれが我に従えの正体って?」
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