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「いや、仁岡、もともと小学生にしては老け気味だったから、ようやく制服が追いついてきた感じだよねと思って」
「もっといい言い方はないのか……」
そう仁岡は渋い顔をしていたが。
いや、仁岡は、もともと大人っぽいから、中学の制服、よく似合うよ。
……なんて、恥ずかしくて言えないではないですか。
少し赤くなったなつのは話題をそらすように言った。
「そういえば、亜紀ちゃんさ。
あの洞窟は知ってたけど、金色の三日月なんて見たことなかったんだって。
十郎太さんの気配を感じて、若君が兜を浮き上がらせたのかな?」
だが、仁岡は、
「単に潮の満ち引きの関係だろ」
と面白くないことを言ってくる。
「でも、あのふたり、まだ成仏してなさそうだよな。
今度、様子を見に行ってみるか」
「うんっ。
そうだね。
今度はみんなで、お弁当とか持っていってもいいかもねっ。
おにいちゃんなんて、あの日仕事で行けなかったからさ。
いまだに後ろ振り返って見てるよ。
十郎太さんがいる気がするんだろうね」
そう言って笑うなつのの横で、仁岡がなぜかちょっと元気なく呟く。
「みんなでか……」
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