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「氏真殿は清潔な政治家です。彼と協力して進めることは、武田の今後の発展を考えると欠かせないと思います」
勝悟の言葉に小助は大きく頷く。
「わしもそう思う。何よりもお主を信じる。お主がいなければ、武田は東海で孤立した存在となり、下手すると義信殿を失ったかもしれない」
「私は機会を見つけて鬼美濃殿と話してみます。心を込めて話せれば、思いは伝わると信じます」
勝悟が疑いを乗り越えようとする姿を見て、小助は嬉しそうにほほ笑んだ。
「まずは、猿啄城攻めだな。織田との戦は今まで我らが経験したことがないものになるやもしれん」
「乗り越えましょう」
いろいろな思いを込めて、勝悟は小助の手を握った。
宿舎に戻ると政景が勝悟のもとを訪れた。
昌景は遠江駐留部隊五千人の部隊長であり、駐留軍の軍政を預かる勝悟の上役となる。
可能な限り氏真の商業政策を保護しようとする、勝悟の一番の理解者が昌景と言えた。
「鬼美濃殿は親今川に対して反対のようですね」
挨拶もそこそこに勝悟は先ほど小助から聞いた話を口にした。
そこには、昌景に対する勝悟の信頼の気持ちが現れている。
昌景は勝悟の深刻な顔に対し、苦笑いを浮かべた。
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