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1,You & I ロボット社
小会議室の長方形のテーブルの上に、北条開(ひらく)はYou & I ロボット社が入っているビルの1階にあるコーヒーチェーン店で買ってきた、蓋つきタンブラーのコーヒー3個を置いた。
レイコ・ジョーンズ女史に向かい合う形で北条開と青木渚が席に着くと、面接を受けるようにかしこまった2人にレイコ女史が年長者の威厳のこもった声で言った。
「さあ、では始めましょうか」
小会議室のある6階の半ばシェードを下ろした窓から見えるのは、他の高層ビル群と乾いた感じの空という、近未来的ないかにもYou & I ロボット社のイメージにぴったりの風景だった。
You & I ロボット社の創業50周年を記念して新たに社史が編纂されることになり、広報課の開と渚がその編集委員になった。
彼らは入社3年、2年とまだ日が浅く、社史を編集しながら自分たちもこの会社の歴史を学んでいくという気概で取り組んでいた。
一方、レイコ女史は肩書はロボット社会学者で、You & I ロボット社のコンサルタントとして週に1回の割合で出社していた。
その週に一度の出社のタイミングに合わせて、開と渚はレイコ女史にインタビューする約束を取り付けていた。1回につき約2時間で、数回の予定だった。
インタビューはすでに3回行われ今回が最後ということになっていた。
社史はこれまでの年表を元にして、読み物として楽しめるようその中から特に興味深いエピソードを関係者の証言で検証しながら創作する手はずになっていた。
創作といってもあくまで事実に基き、フィクションの要素もその事実に相反することは書いてはいけないとされた。
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