ヤマギシの好きなもの

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ヤマギシの好きなもの

学校の廊下を渡る。 このときが一番コワイ。 お!!!ダさイや!! …見つかった。 しかも、D組や…サイアクや。 ひゃっはっは、みたいな声と 足音と、伸びてくる手、 降り注いで、降り注いで、 …逃げられへん。 ダさイー、ダさイちゃぁん。 "や、やめて、…" なぁんでや、オレラなぁんもしてへんぞぉ。 そやそや、まだなんもしてへん。 これからや。はははっ。 なぁなぁダさイ、チューしよか?チューしたろ? うっわ、おまえ、たってるど? たっとるやんけ。 触ったろか? "ち、ちが、…がう、ない、…っない…!やめ…て" ほれ、みせてみぃみせてみぃ、 おらおらはよ脱げ。 脱がせてほしい、やんな。 そうかっおっしゃ任せろ。 "や、やめ…て" はあっっ?なんや? やって、やろ。 そっか。よしよし。 ほら早よ出せや。 …出てる、出てる、ちゃっち!! くそや。くそやんけ。 ぎゃははは、ぎゃーはっはは はぁっはっはっは… (ちょっと、あんたら。やめたりぃや。) (…そやで。やり過ぎや。) 通りすがりのギャラリーが眉をヒソめる。 けど …うっさいわ。いぬれ、どブス。…殺すど。 始まったサバト、 終わる気配はない。 みんな関わりたくないから、 あかんやん、て思てても 知らん顔するを選ぶ。 早く早く彼らが僕に飽きて、 この歪んだ祝祭が 終わりますように。 それだけ願う。 いっそまじで 虐殺してくれたなら、 その方がいいのに。 ずっといいのに。 「…なんやあっ?おまえ!」 「何みてんねん!」 轟く怒号。 カレラに隠れて姿は見えない、けど、けど、…もしかして 「見てるだけや。」 涼しい声。 …ぐりぐり目玉の涼しい声。 そやからなんでみてる?ていうてんにゃ。 「見たいから。」 おまえ、オレラ舐めとったらあかんど? おまえ、前もみとったなあ? 「見たいもん見ててどこが悪い?」 うええええっまじかっ! ヤマギシ、おまえ、ダさイ好きなんか? うっわ、キッショ。 「なんで、ダさイや、思うねん?」 え。 「おまえらダさイ弄るとき、いっつもメンバー、一緒やんけ。なんでダさイだけ見てる、になるねん。」 …あ、ああ、…あ? ヤマギシがひとりに向かって言った。 「おまえ見てる。」 えええっ…。 激しくたじろぐ。 となりのやつに向かう。 「おまえを見てる」 な、な、なんて? こいつの腰も抜けそうや、 おまえ、おまえ、おまえ、と 指差すみたいに一人ずつ。 な、なんでみてんねん! ひとりがたまらず叫んだ。 「見てたいから。ずっと。」 ヤマギシのぐりぐり目玉はデカイ。ほんまにデカイ。 「おまえのことを見てたい。」 そしてぐりぐり目玉が凝視してくる。 D組の奴等はみんな、 水かけられたより青ざめてた。 なんやこいつ…、 ガチマジでキモチ悪い…。 「こらぁぁっ!!、おまえら何してんねん!!」 遠くから指導部のせんせが 叫びながら走ってくる。 だれかが呼びに行ったんや。 いこうぜ、お、おう、 奴らは ぱらばらっと散る。 あっという間に散り切った。 「…たく、ほんまにアイツら。 もっかい、絞めとかんとあかん。 太宰、どもないか?大丈夫か。」 なんでないです、大丈夫です、 口のなかでもぐもぐいう。 「…思たより、上手いこと行ったな。」 ヤマギシ…。 …ヤマギシの顔が見られへん。 助けてくれたのに。 顔が見られへん…。 お、山岸、お前も どうもなかったか? 先生がヤマギシに聴いてる。 うん、全然どもない。 あ、そうや、 「山岸!おまえの絵、賞もうたで!賞状届いてるから、月島せんせとこいって、もうてこい、」 指導部の先生がすごく嬉しそうにいう。 その隙に走った。 「ダさイ…?」 ヤマギシの声、聞こえたけど、 振り向かんで走った。
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