夜明けの日差し、冷たい君と

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   夜明けの日差し、冷たい君と  気づけばいきなり始まって、いつの間にか終わってた。  つまり、ゾンビパニックはついに収束した。  ワクチンの開発は遅々として進まず、ゾンビはいまだに跳梁跋扈。それでもしぶとく人類は「抗体」なんてものを手に入れてなんだかんだ生き残ってる。  それでも新世代だとか非抗体保持者の救済義務だとかで内輪もめができるのは人間だからか。  でも、それは俺に関係ない事情。キャンピングカーで諸国漫遊、頼れる相棒も一人いる。  海岸沿いの道路に車を止め、潮風を浴びながら二人で日の出を眺める。 「………なんで、ついてきたんです?」 「………」 「はぁ、会話は期待しないほうがいいのか……」  マンションのお隣さん、年上の女性、俺の相棒で――正真正銘の動く死体、ゾンビ。  ゾンビパニック初日。俺は彼女に腕を噛まれて、何の変異も変化もせず……逆になぜか彼女に懐かれた。ほかのゾンビのように襲うことはなく、カルガモみたいについてくる。  目下の悩みは意思疎通ができないこと。感情があるのか不明な時点で犬とか猫より分からない。  それでもなんだかんだと言って今日までたどり着けた以上は明日も明後日もその次の日も、文句を言いながら悪態をつきながら進んでいくのだろう。  横を見れば、彼女の瞳は海と日の光を映していた。死相が出っぱなしで目の奥に意思なんて感じられないけど、まっすぐ見ていた。 「考えても、無駄なのかなぁ」  物理的に近づいた代わりに心の距離がつかめなくなった。マンションの薄い壁で隔てられていたあの時より、もっと………  ――ふう、夜通し走り続けたせいか眠くなってきた。  彼女へ指を絡ませて車へ連れて戻る。そろそろ、寒くなる。
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