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ささくれた畳の上に、長い影が落ちる。西日を受けた部屋はオレンジ色の光に包まれ、風は生ぬるく暑い。
蒸すような湿度の中、さっきから首を振っている扇風機を最強にしても、流れ落ちる汗を止められない……いや、止められないのは扇風機のせいじゃない。
組み伏せた白い肌に浮き上がる、いくつもの痣。その痣の上にまた痣を重ねる。
顎のラインで切り揃えられたまっすぐな髪は褪せたような茶色で、今は汗ばんだ頰に張り付いている。顎の先から滴った汗が、その頬に弾ける。
「あ、あんっ…」
短く上がる声。大きく開かせた足の先に、けばけばしい極彩色が踊る。
長い爪が空を掴む。その手首を掴む。起き上がろうとするのを抑え込み、さらに深く…オレの印を打ち付ける。
「ぁ、んっ…ダメ、そこぉっ…!」
ダメ、と言っておきながらも腰は貪欲に揺れた。
快楽を求めて激しく食いつくこいつは…オレをさらに深く銜え込み、オレ自身を濡らし、猛らせる。
ちりん、と風鈴が鳴った。急に強くなった風が、網戸をガタガタと揺らした。さっきまでオレンジ色の光で暑苦しかった空が、今は濃い灰色の雲で覆われているのが窓越しに見える。
「雨の匂いがする」
女の耳を甘噛みして囁く。
女は聞いているのか聞いていないのかわからないが、甘い声を立ててオレの背中に爪を立てた。
ちりん、ちりん、ちりん。風鈴が狂ったように鳴り始める。間も無くバケツをひっくり返したような激しい雨音がし始めた。
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