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「えー」唇を尖らせるイタバシ。マツシタは彼女の反応を特に気にする様子もなく鞄を肩にかけてヘルメットを掴んだ。俺もそろそろ帰ろうかな。三人で部室を出た。
「そろそろ雪降りそうだよね」とイタバシが空を見上げた。それに対してマツシタが「泉ヶ岳にまだ3回雪降ってないです」と言う。
「それ何?」
「泉ヶ岳に3回雪が降ったら4回目は里にも降ってくるって話です」
「へー」
「結構当たります」
「雪降ったらカブで通えなくなるよな」と俺は言ってみた。マツシタがいつもより少しキリッとした顔で俺を見た。
「じつは冬タイヤ買いました」
「まじで」
「まじで」
「原付に冬タイヤなんかあるんだ」
「新聞屋さんは雪でも新聞配達しますから」
「確かに」
走り去るプレスカブをイタバシと眺める。「マツシタ君って不思議な人だよね」と彼女がつぶやいた。
「不思議と言うか変と言うか」
「ツダ君ってマツシタ君と仲いいよね」
「まあ、はい、そうですね」
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