プロローグ:出撃の狼煙

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 下位機種たちの脳殻に端的な命令コードが刻まれる。  テスカトリポールシリーズは、基本的に生存して拠点に帰還することを前提におくが、上位機種からの命令コード次第ではその限りではない。必要ならば自壊してでも作戦遂行を最優先せよと命令すれば、その通りに動いてくれる。  現状下位機種も腐敗が進んでおり、どの機体も本来の性能には程遠い。先程性能試験で派遣させたRevision2は、測定時点で全能度五百後半。本来なら千七百以上はあるはずの機体だが、結果は見ての通りだ。  戦力は元より不足。大半は朽ちて起動せず補填も効かない。だからといって潜伏しながらでは時間がかかりすぎて請負機関に露呈する。しかけるなら魔生物のスタンピートの対応にかかりっきりとなっているところで不意を打ち、一気に攻め立てるほかない。  肉体組織の採取もいずれ警戒されて露悪する。その前に支部の一つを潰し、自分の状態を可能な限り最高品質にしておいた方が建設的だ。完全回復せずとも一定まで全能度が回復すれば、自分一人でどうとでもなるのだから。 【作戦準備完了。フラグシップ、テスカトリポールRevision5、出撃します】  屋上にある貯水槽から人影が消えた。誰もその変化に気づく者はいないまま、ただ微風だけが吹き抜けるだけであった。
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