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「CDか、そうだな。服は新しいものを買い直せばいいだろう」
そんな言葉に奈々は吹き出す。
「なんだ?」
「いえ、植木さんがぶちょ……」
いいかけると友弥の眉がピクリと上がって、奈々は察する。
「──友弥さん、がパトロンだといっていたので、今のセリフが本当にパロトンみたいだなと思って」
「パトロンか、そんなつもりはないけどな」
そんな話をしているうちにCMが終わって映画が始まる。ふたりは画面に見入った。
何度も観ていて展開が判っていても、それが答え合わせのようになって楽しめるものだ。新しい発見がある時もある、奈々が初めて観たのはずいぶん子供の頃だった、成長してから観るとこんな意味だったのかを思うこともあり、なかなか侮れない。
主人公に危機が迫る、その回避の仕方だって知っているのに、応援して思わず身を乗り出しそうになる。ああよかった、助かった、と安心した時、不意に髪をひと房、持ち上げられた。
「ん」
くすぐったい感覚に首をすぼめた。状況を確認すると、友弥の指が奈々の髪を絡め弄んでいる、ソファーの背もたれに左腕を乗せ、奈々の左側頭部の髪をいじっているのだ。
優しい仕草に奈々は眠気に誘われる、いや、まだ映画を観たいからとそっと体を動かし友弥から逃れた、髪はふわりと戻ってくる。
まだ湿り気が残る髪の感触がなくなったのを残念に思い、友弥は再度髪に触れた、今度は逃げられないようにと奈々の頭を撫でる。髪越しに伝わってくるぬくもりが心地よく、滑らか髪を何度も撫でた。
もっとそのぬくもりを確認したくなる。奈々の背後から、そっと頬に触れた。
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