特殊体質の俺と普通の彼氏の話

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 馬鹿な話を聞いてくれ。  俺は涙が宝石になる体質だ。  うん今引いたろ、でも本当だ。  彼氏の家であくびをした。小粒のダイヤが床に落ちた。  当然聞かれるよな。説明するよな。  そうするとさ、彼氏の目の色が変わるわけだ。  俺は思ったよ。  ああ、まただな、って。 『したら、そいつはタチウオやったわけですわ』 『なんでやねん!』 「ギャッハハ、やば、おもろ……! え、なんで笑ろてへんの!?」 「その前になんだよこの状況」  俺は改めて周りを見渡した。  見渡すまでもないワンルームで、横並びになってこいつの秘蔵のDVDを、そう、やらしいやつじゃなくてお笑いを、1時間ほど見せつけられている。  スンッとしてる俺を差し置いて、彼氏のほうは『そろそろ酸欠起こすな』ってくらい、身体を折って笑い転げている。  幸い先にDVDの方が終わったので、彼氏はティッシュをとって盛大に顔を拭いた。 「あー、アッカン、俺のほうが涙枯れてきたわ」 「…………あー、そういう狙いね。お前変わってるわ」 「なんでやねん」  彼氏は床に積まれたケースの山をひょいっとまたいで、棚の前で次の一本を吟味しはじめた。  俺はため息をついてその後ろ頭を眺める。  あるだろ。泣かせる方法なんていくらでも。 「おっしゃコレいこ。めっちゃ笑うで」 「なぁ腹減った」  彼氏はぴたっと動きを止めて、ホンマや、と呟いた。 「米とハムしかないで。あと野菜」 「チャーハンは?」 「最高やん」  二人で数歩先のキッチンに向かう。  でも本当、こいつのおすすめは全然わかんねーな。笑いのツボの差かな。  振り返った彼氏がニヤッと笑って、 「タマネギ切る?」  と言ってきた。 「切らねーわ」  と、背中を強めに叩いておいた。
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