きみといっしょに、おやすみを。

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* 「千夏……。なんで、急に?」  部屋の中に入りながら尋ねると、スニーカーを脱いだ千夏が、俺を見上げる。  俺達はけっこう身長差があるので、こういうとき、千夏はどうしても上目遣いになる。  大きな目で俺を見上げてくれるのが、とても愛らしい。 「……うん、急にごめん。でも昨日、”会いたい”って言ってたでしょ」 「マジで会いにきてくれるとは……」  昨日のメッセージのやりとりは、ちゃんと覚えている。週末の予定について話していたんだ。  試験勉強のため、今週の土日はずっと家にいる予定だった。  千夏も同じだと知ったので、俺は冗談まじりに”じゃあ俺の部屋で勉強しない? 千夏に会いて~!!”と送ったんだ。  そのときはシュールなスタンプでごまかされたし、さすがに試験前の大事な時期だから、自重していた。  でも千夏は、会いにきてくれたんだ。  驚いて目を丸くする俺に、千夏はぷいっと顔を背けた。  でも、さらりと揺れた髪からのぞく頬は、赤く染まっていた。 「……こうでもしないと、なかなか会う時間は作れないでしょ」 「~~っ、千夏ぁ~っ!!」  もう一回抱きつこうと腕を広げたところで、がしっと肩を押さえられた。 「もうっ、二度も抱きつくな! っていうかあんた、汗臭いよ。早くお風呂入っちゃいなさい! そのあいだに晩ごはん作っちゃうから」 「へっ、晩ごはん? ……作ってくれんの!?」 「近くにスーパーあったでしょ。そこでなんか材料買ってく……あ~っ! もうっ!!」  勝ち気ながらもしっかり俺の世話を焼いてくれるなんて。  なんて最高の彼女なんだと、感極まってしまう俺だった。  千夏は俺が抱きつくのを阻止しようとしてたみたいだけど、そりゃあ男と女の子だから、力の差は圧倒的だ。  ぎゅ~っと二回目のハグをすると、千夏は最初こそ暴れていたけれど、大人しくなった。
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