きみといっしょに、おやすみを。

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*  買い物には俺も同行した。  千夏に買い出しを任せて自分はのんきに風呂になんて、入れるわけがない。  スーパーで食材を選ぶ千夏がいかにも奥さんっぽかったので、「新婚夫婦みたいだな~!」と言うと、ジト目でにらまれてしまった。まあ、それも可愛いんだけど。  千夏がご飯を作ってくれるあいだ、先に風呂に入らせてもらった。  せまいユニットバスでシャワーを浴びていると、いい匂いがただよってきた。  その匂いはもちろん、千夏が台所で調理をしている物音が、なんとも心地良かった。  ……家に自分以外の誰かがいるって、いいもんだな。  風呂から上がると、食事の支度がみごとに完了していた。  ねぎ塩豚丼に冷やしトマト、なすと小松菜のみそ汁。  米を炊く手間が惜しくて、最近は麺類やトーストばっかりの食事になっていた。  だから、スタミナがつきそうな献立がとても嬉しい。  ふだん簡素な食事ばかり置いてあるテーブルが、今日はすごく輝いて見えた。  しかも千夏は、料理上手なのだ。多忙なお母さんの代わりに、ずっと家事をしてきたんだから。  色鮮やかな献立がどれも美味しいことは、俺がよく知っている。  こんなの見せられて、食欲が抑えられるわけがない!  よだれが垂れないように気をつけながら、千夏にお礼を言う。 「ありがと~っ!! すっげー嬉しい!」 「……いいから食べるよ」  千夏は照れたようにそっぽを向いていたけど、その口元がほんのり和らいでいた。
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