第一章 初陣の巻  その1

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第一章 初陣の巻  その1

 「なんだ、これ」  真田はある日の夕方、コンビニ弁当を買って学生寮への道をブラブラと一人で歩いていた。すると道端にあった小さなお地蔵さんを見つけた。ひざぐらいまでの高さ。石でできているようだがコケがびっしり生えている。誰からも忘れ去られているようなお地蔵さんだ。 「誰もお参りしないだろうから、ほいっ」   たまたまコンビニで買った小さなまんじゅうを一個お地蔵さんの前にお供えし、手をあわせた。 「困ったときはよろしくお願いしますねっ」 とそそくさとお祈りをして寮へと帰った。 真田村雪は、八王子の大学一年生。四月に学生寮に引っ越してきたばかりだ。学生寮は、八王子の滝山という自然豊かな山の中にある。 もうすぐ、夏休み前の試験がある。 「おい、真田。どうせ講義のノートとってないだろ。見せてやるよ。そらっ」 と同じ寮で友人になった橋場秀俊がノートをポーンと渡してくれた。 「おっ。ありがたき幸せ。またコーヒーでも奢るから。日本政治史の講義、いつも寝てたからな。いやー、助かります。でも試験ヤバいな。」 と真田は頭を抱える。あさってから夏休み前の試験が始まる。真田と橋場は同じ法学部。大学の定期試験というものがどんな形で行われるのかさえ知らない。高校の時の中間試験のイメージしかない。寮にいる同じ学部の先輩からは雰囲気は教えてもらったものの、実際やってみないとわからない。
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