じわり、じわり。

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 ポツポツ、ザァアアア……!  激しい雨が降り出した。  動悸がする。  呼吸するたびに異臭が鼻をつく。  車内は最初からこんなに空気が悪かっただろうか。楚々(そそ)とした真由香ちゃんの見た目からかけ離れていてるが、どっかに腐った野菜でもあるんじゃないか。  電話をかけた。 「もしもし」 「あ、真由香ちゃん?この車ドア開かないんだけど」  言いながら不信感を抱いた。電話の向こうはざわついている。総務部長のガラガラ声が聞こえる。 「すみません榎本係長、ちょっと私用の電話で出てきますね」と真由香ちゃんの声。  おかしい。まるで社内にいるみたいじゃないか。  さっきまで一緒だったのに。  雨の合間に雷鳴が轟く。  電話の向こうが静かになる。人気のないところに移動したらしい。 「車って……何言ってるんです。話がよくわかんないんですけど」 「何って、君の車の空調見てるんだよ。飲み物買ってくるってそのまま消えるなんて薄情だなぁ」 「何のことですか。車なら週末買い替えました。  私昼間にぶつかった後、野崎主任には会ってませんよ」  はぁ?  何の冗談だ。 「おいおい、これってドッキリか何かなの?」 「知りませんよ……あ」  彼女は何かに気づいたように言葉が止まった。  返事を待つ。俺は貧乏ゆすりをしていた。足元の感触がぶよぶよしている。  フロアマットが濡れていた。     靴の動きに合わせてぱしゃぱしゃ音がする。  浸水?まさか。 「そっか、美紀ちゃんの仕業かぁ! よかった!」  急に明るい声。  アンダーパス。  夕立。  美紀。  まさか。 「え?なんで美紀のこと知ってんの?これアレかな?俺が前に怖がらせたからその仕返しとか?ははっ」  俺の声は情けなく震え始めていた。 「あんなん怖がるわけないでしょ、知ってたんだから」 「えっ」  思考停止。  今なんて言った? 「あたしここに派遣される前に従姉妹の三周忌に出たんですよ」 「なんのはなし」 「私の従姉妹、前山美紀(まえやまみき)って言うんです。覚えてるでしょ?」  背筋がゾワっとした。 「、野崎主任」
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