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まだ「さん」とちゃんと言えず、「しゃん」と言ってしまう可愛いみみちゃん。クモはみみちゃんが嫌いでした。
「ね、ね、クモしゃん。どーして、ここにいるの?」
じめじめした真っ黒な影から出て行こうとしないみみちゃん。クモはおどろかせようと、いきなりみみちゃんに近づきます。
——これで怖がって帰るだろう。
すると、みみちゃんはいきなり近づいてきたクモにくすくす笑いました。楽しそうな笑い声に、クモは固まってしまいます。それを見て、またみみちゃんはくすくす笑いました。
「クモしゃん、面白い」
面白い、と言われたのは初めてでした。いつもクモを見れば、人間は泣いてどっか行ってしまいます。それなのにみみちゃんは、くすくす笑ってとても楽しそうでした。
クモは目をパチパチとさせると、みみちゃんからはなれます。するとみみちゃんは、クモに近づこうとしているではありませんか。
——なんて変わった子なんだ。
こんな子、クモは一度も会ったことがありません。
「クモしゃん、あそぼう」
みみちゃんはクモに手を伸ばそうとすると、いきなり大きな音が聞こえてきました。みみちゃんのお母さんではありませんか。
お母さんはみみちゃんの手をぎゅっと握ると、クモから遠ざけます。
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