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日が落ちて暗くなって、街灯が扉を照らしていた。ぐるりとひと回りしてみる、やはりなんの変哲も無いただの扉だ。
空き地側から扉を開けて、くぐり抜けて道路側に出る。変わりは無い。扉を閉めたあと今度は道路側から扉を開けて、空き地側に入る。同じく変わりは無い。
「なんでもないな、ただの扉だ」
扉を閉めて、外側から回り込み前に立つ。立派な扉だな。
「雨や風にに晒されているわりにはキレイだな、汚れているようにも見えない」
そういえばさっきの子供達が野球のボールを当ててたはずだけど、その跡も見あたらない。
「きっと高級品で、あまりに立派だから誰かがシャレで設置したんだろうな」
そう納得する事にし、面白半分にコンコンとノックをしてみた。
「どうぞ」
思わず仰け反った。あわてて回り込み扉の後ろを見たが、誰もいない。もう一度ノックすると、やはり扉の向こうから、どうぞと返事があった。
怖いもの見たさで扉を開けてみると、そこには部屋があった。無機質なコンクリートの壁にペイントした感じの、オフィスのひと部屋みたいなところに、三人がけのテーブルが正面にあり、三人の男が座っていた。まるで面接試験のような雰囲気だ。
俺が黙ってその場にいると、左端の男がひと言不合格と言う。すると扉が勝手に閉まり、俺は外で呆然と立ち尽くす。
なんだなんだ今のは。この扉はどこかに繋がっているのか、本当にどこでもドアみたいなものなのか。俺は試しに、どこどこに行きたいと言ってから開けてみたが、何度やっても空き地に繋がる普通の扉のままだった。
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