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そこで考え直す、さっきは何をやった、ノックだ、この扉はノックをするとべつの所に繋がるんだ。俺は勢いよくノックしてから扉を開けてみたが、空き地だった。そして背後から不合格という声が聴こえた。不合格、就職活動の時に何度も言われたこの言葉に俺は気が高ぶった。
俺は気を落ち着け、今度はゆっくりとコンコンと二回ノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
そう言って扉を開ける。今度は繋がった、あの部屋だ。俺は中に入り、後ろ手で扉を閉める。
「不合格」
また左端の男がそう言うと、俺はまた外に放り出された。ここで俺はようやく気がついた。あの部屋に行くには、社会人としてのマナーが必要なんだと。今のは後ろ手で扉を閉めたのが原因なのだ。
それから俺は何度も挑戦した。ノックは聴こえるくらいで軽く二回、どうぞと言われてから失礼しますと言って入る。扉は後ろ手で閉めず、中の人にお尻を向けない角度で後ろを向き閉める。そこまでいけても今度は右端の男に服装で不合格と言われる。
スーツをクリーニングに出して、シャツとネクタイと靴下にアイロンをかけ、靴を磨く。
シャワーを浴びて全身を洗い、ヒゲを剃り髪を整えて、全身隙が無く扉に向かうも、爪を見落として不合格と言われる。何度も挑戦してようやく面接の席に座る事ができた。
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