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第二話 夢
夢を見ていた。
母親を殺めてしまった時の夢。もう何度も何度も同じ夢を見ていた。夢の中の自分は十歳で倒れてゆく母親にお母さん、これで永遠に僕のものだねと囁いている。それはけして良い夢なんかではなくてただの悪夢でしかなかった。その夢から覚めると決まって自分の目から涙が流れていて死んでしまいたくて仕方なくなった。
忘れたい。忘れてしまいたい。そんな気持ちは大きくなるがやっぱり忘れることが出来ない。
「愛菜ちゃんに逢いに行くか」
ベッドから起き上がり軽くシャワーを浴びてから髪をセットして学校に向かう。ちょうど昼休みで保健室に行くと愛菜ちゃんは留守なようで仕方なく教室に向かった。教室に着くといつものように冷ややかな目で見られながら席に座る。そして佐藤と坂上と話をしてからふと隣の席を見る。すると鈴宮がノートに絵を描いているのが目に付いた。
「おい、それ、お前が描いたのか」
「え、あ、うん。そうだけど」
俺が話しかけると鈴宮は戸惑った様子で返事をした。
「相崎、美桜が怖がってるだろ。やめろよ」
「やめろって別に何もしてねえだろ」
佐藤に言われてそう返すと佐藤はお前の顔が怖いんだよと言ってきた。
「何だよ、顔が怖いって仕方ねえだろ。元からこんな顔なんだから。それに、別に怖がらせたくて声をかけたわけじゃねえよ。ただ、鈴宮の絵が上手いから上手いもんだなと思って声をかけただけだ」
「あの、ありがとう。人に褒められたことないから、嬉しい」
俺の言葉を聞いた鈴宮は小さな声てそう言った。
「おう」
俺はそれ以上鈴宮に話しかけはしなかった。
午後の授業は眠っていてほとんど聞かずに過ごした。
放課後、また坂上に遊びに行こうと誘われる。たまには行っても良いかと気分が乗ったから誘いに乗ることにした。
ー続くー
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