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第三話 付き合い
俺と坂上、佐藤と同級生の女子数人と街に出て歩く。
「お、祐くんじゃない。こんな所で何やってるの。正時くんが待ってるよ」
ゲームセンターで遊ぶ同級生達を見ていると藤が声をかけてきた。
「ああ、たまには高校の同級生との付き合いをな。それより藤は何やってんだよ」
「僕は、正時くんに言われて新しいおもちゃを探してたんだよ。祐くんの連れてるお友達、暇をつぶせそうなおもちゃは居ないの?」
藤に言われて同級生達を見渡してみる。女子達は相手に出来るほど可愛い子は居ないし、佐藤は気が強い。坂上に至っては人気者だから手を出したら逆に何をされるものかわかったものではない。
「居ないな」
だからそう答える。
「ええ、そうなの。ちょうど良いブスは居るのに。確かに心ちゃん以上じゃないと正時くんが満足しないかも」
藤は残念そうにそう言った。
「おい、相崎、こいつ誰」
藤と話していると佐藤が声をかけてきた。俺は藤のことを紹介する。
「そう、別にどうでも良いけどお前、もう行くのか」
「ああ、どうしようかな。俺がここに居ても居なくても同じな気もするし」
俺はそう言うと藤に行こうと言った。
「祐くん、お友達じゃなかったの。そっか、祐くんのこと何も知らない人がお友達なわけないよね」
「余計な事言うな」
藤が少し大きな声でそう言い出し、坂上が何か秘密でもあるのと聞いてきた。
「別に何もねえよ。藤行くぞ」
「え、待ってよ、祐くん。どうせならその子も一緒に遊ぼうよ。人数は多い方がが楽しいし、その子も遊び相手探してるんでしょ」
坂上がそう言い出し藤は首をかしげてどうしよっかなと言った。
「良いからもう行くぞ」
そんな藤を半ば強引に外に連れ出した。
「もう、何で連れ出しちゃったんだよ。僕、おもちゃ探しのために遊んでも良かったのに」
何となく藤のおもちゃ探しに同級生達を巻き込みたくないと思った。
「仕方ないなあ、じゃ、祐くんも手伝ってよ。おもちゃ探し。見つけないと正時くんに怒られちゃうんだから」
「わかった」
藤と二人でナンパをしておもちゃ探しを始める。自分たちと同じぐらいの女子高生一人を捕まえた。そしてその子を連れて正時の家に向かう。
「正時くん、お待たせ。新しいおもちゃだよ」
「おっせえよ、藤。お前、何時間かかってんだ。お前のせいで心がばてちまって俺がどんだけ暇してたと思ってんだよ」
正時は煙草をふかしながらそう言うと心の髪を乱暴に掴む。
「また、そんなに乱暴にしたらおもちゃが壊れちゃうでしょ。おもちゃは大切にしないとね。ね、祐くん」
「俺はどうでも良い。心がどうなろうと知ったこっちゃない。早く新しいおもちゃで遊んだらどうだ」
俺はそう言うと部屋の隅の方に腰掛けた。すると正時は立ち上がり藤が連れていた新しいおもちゃを物色するようにまじまじと見つめるとまあまあ可愛いじゃんと言った。
「あの、私、やっぱり帰ります」
おもちゃがそう言って逃げようとした。正時が苛立っているのがわかる。
「待ってよ、お姉さん。僕たちと遊ぶって来たんでしょ。まだ遊んでないじゃない。帰るのは遊んでからでも遅くないはずだよ。ね、祐くん」
藤がおもちゃの手を掴み逃げるのを阻止した。
「だから、俺はどうでも良いって」
「てめえ、さっきからその態度はなんなんだ。お前は俺達がいねえとろくにダチも出来ねえくせに、あんま調子ぶっこいてんとぶっ殺すぞ」
俺の態度が気に入らなかったのか正時が俺の胸ぐらを掴んできた。
「やれるもんならやってみろよ。ここに居る奴はみんな過去に何かを背負ってる奴らなんだ。今更俺達がどうなろうと誰も関心も持たねえだろうよ。ほら、どうしたんだよ、やれよ」
俺はひるむことなく正時に言うと睨み付けた。
「もう、やめなよ二人とも。仲間割れは良くないよ」
「仲間ね、仲間なんて思ってるのはお前らだけだな。俺は特に行く場所ないから居るだけだし」
俺がそう言い放つと正時が無理矢理俺を立たせ思いっきり殴ってきた。俺はそんな正時に殴り返し応戦する。
「てめえほどこっちは狂ってねえんだよ」
「狂ってねえだと。笑わせんな。お前は同級生殺しで藤は動物殺しの快楽犯。ついでに俺は母親殺しだぞ。それの何処が狂ってねえんだよ。ここに居る奴らはどいつもこいつも狂ってやがる。それを自覚したらどうなんだ」
その後も正時との殴り合いは続き藤が本気で止めに入るまで体に傷が増えていっても二人ともやめなかった。
「ありゃ、おもちゃが居なくなっちゃった」
気がつくとさっきまで居たはずのおもちゃは逃げていた。藤はそう言うと残念そうに苦笑して心に近寄った。
「それにしても心ちゃん、あんな騒ぎがあったのによく眠っていられるね。正時くん、どんだけ心ちゃんと遊んだの」
「藤が早くおもちゃを連れてこねえからだろ」
正時はそう言ってベッドの上に腰掛けた。
「俺はもう行くよ。ここに居てもまた殴り合いになるのも嫌だしな」
「え、もう行っちゃうの」
藤にそう言われたが俺は立ち上がり正時の家を後にした。そしてたまたま入ったコンビニに鈴宮がいて特に用はなかったが何となく声をかけてみた。
ー続くー
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