第0話:プロローグ

1/2
前へ
/24ページ
次へ

第0話:プロローグ

 ボンソワ! 日本のみなさん。  異世界にある、ロネア王国の宮廷料理長、ティルレと申します。  といっても、本当の名前じゃありませんことよ。  実は私、転移者なの。  転移する前の名前は、合田 学武(ごうだまなぶ)。  自衛隊の糧食(りょうしょく)班にいた調理師だったのよ。  え? 男だったのかって?  言いたいことは、わかってるわ。  でもそこは、大人の事情だから、察するのがマナーってものよ!  ともかく、私がなぜ異世界に飛ばされたか、すこしお話しするわね。  あれは、ちょうど10年前だったかしら……。  ある日、憧れの中島少佐の為にプリンを作ったの。  中島少佐は、レンジャーに所属するバリバリの武闘派で、しかもすっごいイケメン!  でも顔に似合わず、大の甘党だったのよ。  よく彼の為に、いろんなお菓子作ってあげたっけ……。  ま、そんなことは置いといて、とにかくその日、食堂にいた彼にプリンを届けたのね。  そしたら彼、えっろい口して食べたのよ~!  私たまんなくなって、思わず声上げそうになっちゃったわ。  したらその瞬間、突然床から大きな光が湧いてきて、私たち2人を飲み込んじゃったの!  で、気がついたら、この王宮の庭に倒れてた。  最初は、訳分かんないから大騒ぎよ!  衛兵(えいへい)にも追われるし、中島少佐と2人で必至で逃げた。  でも、その最中に中島少佐は、矢に射抜かれて死んじゃった……。  まあ、昔の話だから、気にしないでちょうだい。傷は癒えてるわ。ええ、平気よぉ……。  とにかく、私は捕まって牢屋に閉じ込められたんだけど―― 「私は世界一の料理人よ、料理も食べずに殺したら、必ず後悔するわ!」  って大見得きっっちゃたの。  そしたら、食いしん坊の看守が食いついてきて、作ってみろってことになったのよ。  元々は、実家がフランス料理やってたから、洋食は何でも自信あったわ。  それで調理場の余りもので、適当にそれっぽい料理つくってたべさせた。  そしたら、その料理に看守が腰ぬかして、そこにいた全員が私の料理を奪い合いになっちゃった訳よ。  当然、その後は看守の料理番になって、そこから噂を聞きつけた近衛兵(このえへい)の料理も作るようになったわ。  元々この国の料理、古代の地中海みたいな料理だったから、フランス料理が口にあったのね。  そして、今や宮廷で料理長! えっへん!  でも、普段の料理を作ったりしないわ。  パーティなんかで、特別な催しがあったときだけ料理をつくる役目なの。  この国には、最初フォークやナイフもなかった。  何でも手で食べて食べてたのよ! 信じられる? アニモーよ、アニモー!  お皿だって素焼きの質素なものしかなかったから、全部ドワーフの職人たちと協力して立派なものを作ったのよ。  テーブルなんて燭台(しょくだい)すらないし、全て一からコーディネートしたわ。  文明の遅れた周辺の王侯貴族がパーティーに来たら、びっくらぽんの大騒ぎよ!  そう、私はパーティで無双してるの!  という訳で、時間もないし、その無双料理を紹介するわね。  今夜、晩さん会があるんだけど、そのメニューがこちら! ・ドラゴンの卵を使ったオムレツ ・ペガサスの生ハム、古代桃添え ・アルミラージのパテ ・豚肉とザラタン茸のソテー ・スライムのラビオリ蒸し ・(いわし)とマンドラゴラ、薔薇の香りを乗せて ・クラーケンのポワレ ・グリフォンの赤ワイン煮パスタ ・ガーゴイルの羽、ガレット風 ・レッド・ドラゴンのポルト酒煮込み ・黄金のリンゴで作ったアップルパイ  そっちじゃ、手に入らない珍しい食材だけど、日本の材料で代用できるレシピもご覧にいれますわ。  それでは、次号までサリュ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 最後までお読みいただき、ありがとうございます。 第1話は、ドラゴンの卵を使ったオムレツをご紹介します。 ぜひ読んでくださいね! ――クロス作品―― 『ISEKAKU ~異世界格闘技に人類最強が参戦したら、どうなるのか?~』 連載中!!
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加