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 赤信号で車が停まると浩輔はリモコンのスイッチを入れた。俺は助手席で身体に力を入れた。意識が保てなくなりそうだからだ。浩輔が俺の太ももを焦らす様に触ってくる。 「イクなよ」  先程ベッドで「付き合ってもないくせに嫉妬すんなよ」と言い返した。浩輔は激高し、リモコンバイブを取りだした。「教育的指導」と言っていたが、こんなの只の屈辱だ。それでも、浩輔を嫌にならない俺も大概だなと思う。このまま映画館に行こうと言われ今の状況に至る。 エンドロールまで観終わったが、映画の内容なんてこれっぽっちも入ってこなかった。映画の最中にも浩輔が触ってくるからだ。声を出さない様にする苦労の方が大変だった。今も俺は、ひとりまたひとりと劇場を後にする人にバレない様に下を向いていた。 「ひっ」  思わず声を上げてしまい、手で口元を押さえた。リモコンのスイッチが入ったのだ。浩輔に顔を向けると「しー」と笑顔でジェスチャーをしている。何とも楽しそうだ。「ふざけんな」と俺は心の中で悪態を付く。
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