夜もすがら

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…今日は朝から気分が悪い。 ジャーッという音を立てて渦を巻くように流れていく水をぼうっと見つめる。 私が排泄したモノはこうも簡単に綺麗さっぱり無くなってしまうというのに、どうして私自身を消すのはこんなに困難なのだろう。 そんな事を頭の隅で考えつつ個室から出ようと鍵に手を伸ばした、その時だった。 「きゃはは~、それやばいってぇ!絶対嘘っしょ!」 「いや、まじだから!まじなんだって!」 突然トイレに響いた大きな声にビクリと肩が跳ね上がった。 しかもその声に聞き覚えがあったから余計にだ。 ドアを一枚距てた向こう側。 そこから聞こえてくるふたつの声は間違いなくミサキとマユのものだった。 2人はよくトイレに来るけれど用を足す事は滅多にない。 いつも手洗い場でメイクを直したり、そこで雑談するのがほとんどだ。 どうやら今日も例外ではないらしい。 一向に個室に入る気配はなく甲高い声が窮屈な空間に所狭しと響いている。 …完全に出るタイミングを失ってしまった。 「てかさぁ、華凛のことなんだけどぉ」 今から出て行っても大丈夫だろうかと頭の中で悶々としている私の耳に突然そう切り出したマユの声が届く。 背中に嫌な汗が滲んだのが分かった。
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