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小学生の時も中学生の時も、何度かトイレで悪口を言って盛り上がっている集団を目の当たりにした事がある。
その状況と今の状況がリンクする。
どうしよう。2人が華凛の悪口を言っているところなんか聞きたくない。
聞いてしまったら私はどうすればいいんだろう。
ありとあらゆる最悪な事態が頭の中を駆け巡り、冷や汗が止まらない。
そんな私の鼓膜を次に揺さぶったマユの言葉は、私の予想に反するものだった。
「この前華凛がオススメしてくれた美容院がめちゃくちゃ良かったんだよねぇ」
「えっ、まじで?」
「まじまじ。イケメンもいるし、接客態度も技術も最っ高。久々に良い美容院に巡り合えた~って感じでテンションぶち上げだったもん」
「何それ最高じゃん!あたしも教えてもらおーっと」
「華凛ってまじで美意識高いしオススメしてくれるもん全部いいよね。さすがあんだけ美人なだけあるわ~」
「分かる!しかもそれを鼻にかけてない感じがまた良いってゆうかさぁ」
「そうそうッ!」
悪口どころか2人ともが華凛を称賛する会話の内容に、ホっと胸を撫で下ろす。
当たり前といえば当たり前かもしれない。
華凛は誰かに嫌われるような対象にはならないだろう。
だってすごく優しくて、すごく強いから。
それに、マユとミサキだってこうして影で悪口を言うような人間じゃないだろう。
そうだ、2人とも、そんな子じゃ…
「てかそれより、舞子っしょ。アイツまじでなんなの?」
安心して個室を出ようと再び鍵に手を掛けたけれど、ミサキのその一言に身体がぴしりと固まってしまった。
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