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「なんであんな地味な奴と一緒に居なきゃなんないわけ?」
ドクリ、ドクリ。
その存在を主張するかのように心臓が大きく脈打つ。
「なんかいつもどもってるしキモくない?」
「分かる、“うっ、うん”とか言ってね」
「ちょ、めっちゃ似てんだけど!ウケる!」
急に酸素が薄くなったかのように息がし辛くなる。
走ってもいないのにハァハァと肩が揺れる。
「なんで華凛もあんな奴と一緒に居るんだろうね。自分の価値下げるだけじゃん?」
「まぁ、華凛は優しいから放っとけないのかもしんないけどぉ~」
「でも正直目障りじゃない?」
「分かりみ深すぎる」
キャハハという甲高い笑い声が耳を突き刺す。
ドアノブに伸ばしたまま硬直してしまった手には感覚さえもなかった。
その手はきっと何も掴めない。
髪を染めたって、毎朝頑張って顔を作ったって、流行りの音楽を聴いたって、
「どうにか消えてくんないかな、アイツ」
私がその世界に認められる事はきっとない。
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