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「所謂架空の友達です。珍しいことではないですよ。10歳頃までにほとんどの人が体験しているだろうとされている現象です」
「この子はもう16歳ですよ…っ!?」
母親のヒステリックな声がズキズキと痛む頭を余計に刺激する。
「鏡に向かって喋るだけじゃないんです…っ!この子、自分の腕を…っ」
「お母さん、落ち着いてください」
「おかしいんです、この子っ…、お願いします、治して下さい…!」
治してください
お願いします
まるで壊れた玩具のように同じ言葉を繰り返す母親が看護師に連れられて部屋を出て行く。
パタンとドアが閉まれば、あれだけ騒がしかった室内は嘘のような静寂に包み込まれた。
「濱田舞子さん」
私に向き直った医師がはっきりとした口調でその名前を呼ぶ。
まるで私が私だと、認識させているように感じた。
「少し、お喋りをしようか」
「……」
「もう僕からは何も質問しないから。君が話したいことを話していいよ」
どんな話しでもいいんだよ、と。
そう続ける医師の目を真っ直ぐと見つめながら、カラカラに乾ききっていた口を開いた。
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