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華凛は無闇矢鱈に暴言を吐く人間ではない。只、敵意を向けてきた相手に容赦がないだけだ。
こうなってしまえば誰も華凛を止める事は出来ない。
だから、これ以上惨めな思いをする前にさっさと立ち去ってしまうのが得策なのだ。
「何?まだあたしになんか用?それとももっと罵倒して欲しいの?」
お望みならいくらでもしてあげるけど?そう続けながら華凛は自信に満ち溢れた笑みを向ける。
その笑顔はとても眩しくて、眩しすぎて、私には直視できない。
もし直視なんかした日には、目玉が潰れてしまうだろう。
女教師は握り締めた拳をふるふると小刻みに震わせながらも「今週中にはノートを出すように」と最後にそう言い残し、教室を出て行った。
バタンとドアが閉まる音が響き渡る。まるでそれが合図だったかのように、教室内はいつも通りの喧騒に包まれていく。
「華凛~!」
バタバタと忙しない足音を立てながらマユとミサキが華凛の元へと駆け寄る。
その光景を見た私はハっと我に返り、遅れを取らないようにすぐさま椅子から立ち上がり二人に続いた。
華凛は自分からは滅多に動かない。
だから授業と授業の間の十分休憩も、昼休みも、必ず華凛の席を中心にして私たちが集まる。
まだ入学して一ヶ月程度しか経っていないけれど、その短い期間で私たちの中で確立された暗黙のルールのようなものだった。
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