夜もすがら

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「君も書いてみたらどうだい?」 もしかしたらこんな言葉は掛けられていなかったのかもしれない。 これこそ私の頭の中で都合よく創り出した世界だったのかもしれない。 でももうそんなこと、どっちでもよかった。 「文字に書き起こすという事はとても良い事なんだ。君と同じように想像力に優れている人は自分の頭の中を整理するために毎日欠かさず日記をつけたりする。SNSやコラム、ブログも同じようなものさ。自分が考えていることや思っていること。それらを発信したい、遺したい、と思っている人たちで世の中は溢れている」 「“書くこと”を通して、綴られた言葉や創られた世界に感銘を受け、助けられることがきっとある。それはもちろん“読むこと”にも同義だ」 「“誰か”の為じゃなくていい。自分の為でいいんだ」 何度も殺しかけた自分を、繋ぎ止めたいと強く思ってしまった。 私に残された術は、これしかないのだと思ってしまった。 「君の言葉で、君だけの世界を創ってごらん」 私が、私で在る為に。 私だけの、世界を。
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