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家に帰った私は真っ新なノートを引き出しの中から引きずり出した。
そして徐にペンを取る。
自分を傷つける為にではなく、自分の言葉を綴るために。
来る日も来る日もペンを走らせた。
真っ白だったノートは文字を書けば書くほどに黒く汚れていく。
寝る間も惜しみ、夜もすがら書き続けた。
書くことに全てを捧げた。
そうして並べた文字はきっと、私の心の叫びだった。
一番最初に書いた物語は、自傷癖がある女の子が幸せになる話し。
家にも学校にも居場所がない。
そんな孤独な女の子に、初めての友達ができる話し。
自分の為に泣いてくれて、笑ってくれる。
そんな“明音”のような存在を、私の文字の中で生きさせた。
物語の中の2人は互いに結婚して子供ができてもずっとずっと変わらない関係を続けていく。
死ぬまで、ずっと。
ひとつの物語を完成させたその日、私は夜通し泣き続けた。
達成感なのか、虚無感なのか、それとも高揚感なのか。
自分を包み込んでいるのがどんな感情なのか分からなかった。
けれど涙は止まらなかった。
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