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「もぉ~どうなっちゃうのかとヒヤヒヤしたけど、さっすが華凛!」
「“年増のババア”って言われた時のアイツの顔、マジで傑作だった!華凛ナイスすぎる~ッ」
まるで好きな異性に媚びるような声でそう言う二人をぼんやりと見つめていると急にミサキの目が此方に向いた。
真っ黒に縁取られているその強い目に見られるのは未だに慣れなくて、心がビクつく。
「ねぇ、舞子もそう思うっしょ?」
私に向けられる声がいつも少し低く感じるのは、気のせいであってほしい。
「うっ、うん、思った。やっぱり華凛はすごいねっ」
慌てて貼り付けた笑顔は言わずもがな不細工だろう。鏡を見なくたって分かる。
きっと数学教師のあの時の顔よりも、今の私の顔の方が何倍も傑作に違いない。
そんな私を、みんなはその瞳にどう映しているんだろう。
「……」
「……」
ちゃんと望まれたであろう返事をしたはずなのに、話しを振ってきた張本人であるミサキはジっとこちらを見据えたまま何も言わない。
何か間違えてしまったんだろうか。言いようのない不安が全身を包み込むように襲ってくる。
ありとあらゆる毛穴から冷や汗が噴き出しそうだった。
「別にすごくないし」
そんな雰囲気を引き裂くように響いたのは力強い華凛の声。
「つぅかマジで腹減った。早く食べよ」
気怠そうに発せられた華凛のその言葉が合図となり、私達は昼食を摂り出す。
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