夜もすがら

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弁当箱の中に転がるようにして横たわっていた卵焼きを箸で摘まみ、口に運ぶ。 お母さんの卵焼きは甘すぎるから余り好きじゃない。かといってしょっぱいのが好きなわけでもない。 どちらかというと甘い方が好みだけれど、お母さんが作るそれはいつも甘すぎる。 まるで胸焼けするほどのスウィーツを食べているような気分だ。 「舞子も塗ってみる?」 卵焼きを口の中で咀嚼しているとふいにそんな言葉が投げかけられて、思わず咽そうになった。 声の主は勿論華凛。グロスを手にしたまま、ジっとこちらを見据える大きな瞳に息が詰まりそうになる。 私が毎朝頑張って作っているそれとは全く違う、綺麗な幅広い二重瞼。 見る度に羨ましさで押し潰されそうになる。 「うっ、うん」 「んじゃ顔こっちに近づけて」 「ちょ、ちょっと待って」 ぐいぐいと手の甲で唇を拭っている私を見て華凛は「何してんの」と呆れたように笑う。 「いや、だってさっきまでお弁当食べてたし…」 「んなの気にしないって」 きっと華凛は知らない。 “気にしない” その一言にどれだけ私が救われているか。
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