2. 捻じれた空間

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2. 捻じれた空間

 とある廃校にきらめく鋭い眼光、闇に潜みし黒い羽毛は逆立っているように見える。獲物を狙うかのようにじっと身を潜め、今か今かとその時を待つ。 校門は重厚な鉄柵で覆われ、南京錠が掛かり閉鎖されていた。  だがそれで侵入者を拒むことは出来ない。校舎の周りを囲うフェンスは何者かがペンチ等の工具を使って切り取り人1人が簡単に通れる道が出来ていた。 恐らく肝試し等で安易にこの地を訪れたならず者がいることを示していた。 この地は高地ということもあり霊が近づきやすい。そして、生者を引き込みその魂を喰らっているのだ。昼間は彼らの活動範囲は制限されるが夜にはその制限が解かれ活発に活動を始める。それにここに蔓延る(はびこる)歪みは危険極まりない。そこに囚われてしまったら一般人では逃げ切ることは不可能だろう。  私はこの溢れ出る負の感情を消すために遥々校門の前までやってきた。中から私の脳裏に直接流れ込んでくる思念。憎悪に塗れた(まみれた)禍々しい感情……人に強い恨みを抱いている。そして、もう一つ感じる感情は助けてと嘆く悲し気な気配。その声は心の奥底から懇願しているように感じた。その嘆きと憎悪の念が余計な霊も引き寄せ、校舎内に負の感情が流れてしまっている。  私は白魔導、真実の目で遠方から校舎内の様子を探った。荒れ果てた校舎内……ガラスは割られ床が抜けている部分もある。木造建築なのが幸いしてか 壁が朽ちている箇所も多々見られた。私は必死に目を閉じ、歪みを引き起こしている箇所を探った。
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