2. 捻じれた空間

2/9
前へ
/18ページ
次へ
 すると廃墟の中のとある教室にひどい歪みが生じていた。ボロボロになった机が無惨に転がっている様が見て取れた。床には大きな穴が明き、そこを埋めようとしたのか違う種類の板が打ち込まれているようだった。  一番禍々しいと感じたのは教室に設置されたロッカーの上に佇む不釣合いなアンティークドール。黄色の綺麗な髪に赤のオーバーオールドレスを羽織り、鎮座している。目は虚空を眺め、当然目は動かないが邪悪な気が駄々流れになっていた。教室の風景をさらに探ろうと他の箇所に意識を持っていこうとしたところ突如、人形に変化があった。瞳孔が赤く輝き、赤い涙を流したのだ。 私はこれが元凶だと確信したのと同時にその瞳は私の見ている箇所を捉えて離さない点に驚いた。気づかれている……そう確信し、後ずさり教室を出ようとすると人形の首がその方向に向き、血の気が引いた。完全に認識されている。 その途端、人形の感情が私の術を通じて流れ込んで来た。1つの個体から2つの感情が交錯した。  「タスケテ……タスケテ……コロスタスケテコロスコロス……コロスコロセ殺セコロセコロセ」  懇願する思いと人間に対する憎しみの念、 止まらない憎悪が私に幻影を魅せた。人形の横に突如現れた黒い幻影。黒いフードを纏い、長い髪が揺ら揺らと蠢く、その隙間から見える赤く吊り上がった目に戦慄を感じ、私は術を咄嗟に解いてしまった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加