2. 捻じれた空間

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 旋律に死のメロディーが奏でられていることに気づき私は耳を塞いだ。全部聞き入って無気力になった場合に待っているのは死である。音楽は止む気配がなく、それどころか更に音は大きくなり耳を塞いでも身体の中で反響しているようだった。何だか息がしづらくなってきた。空気が激減し、脳まで達していないように感じた。少女の方を見ると不気味な赤い眼がこちらを捉えニヤリと笑っていた。ピアノを何とかして止めないと治まりそうにない。  私は気持ちを集中させ魔法を唱えた。手を火傷させればピアノから離れ、この演奏が止むのではないかと考えた。魔力が手に集まり赤い炎の玉が掌の上で揺ら揺らと揺らめいた。まだ小さい火ではあるけれどこれだけの出力があれば軽傷は与えられるはず。私は揺れる頭を抑えながら少女に向けて火の玉を解き放った。
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