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火はグランドピアノに燃え移り業火が辺りを焼き尽くす。
「己……許さん……許さんぞ」
激しい断末魔とともに少女の顔がドロドロと溶け出し、皮膚が焼けただれていった。恨みに塗れた激しい憎悪に満ちた表情を浮かべながら灰のように消えていった。その時、背後からカチャリと扉が開く音が聞こえた。
私は急いで扉に向かおうとしたがナニカが足に纏わりついて転んでしまった。足元を見ると灰色のいくつもの手が床から生え、私の足首をがっちりと捉えていた。その腕の数は計り知れない。私の華奢な身体を包み込むようにそれらが襲い掛かってきた。出口まで10mほど……鍵は既に開いている。後はこの腕を振りほどけば道は切り開ける。
グランドピアノが炎上し、 木材の焦げる匂いが部屋を包み込む。私は決死の思いで振りほどきの呪文を唱えた。
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