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1. 産まれし災厄
また殺ってしまった。目の前に転がる2人の人間……手には鋭利なハサミを手にし血液が滴っていた。私が殺した事実に涙が止まらない。母(産みの親)が残した人間への憎悪の念は止まることを知らずこの空間に迷い込む人間を殺すよう命令を下す。殺した人間の血が玩具である私を人間へと近づけていった。でも私はこんなこと望んでいない。2人の亡骸に手を合わせ流した涙を拭い去った。
私は生まれながら自由が利かなかった。ガラスの目に赤いズキンを着け、毎日同じフリルの可愛らしいドレスを着て部屋に鎮座をしていた。1日中、その場所から動くこともなく同じ景色をずっと眺めているしかなかった。そんな私に命を吹き込んでくれた人がいた。それがレイナ=ホプキンスだった。彼女は黒魔術の巧みな使い手だった。子宝に恵まれず彼女は禁忌に手を染めた。生きた人間を生贄に捧げ、新たな生命をこの私に宿したのだ。
その代償として母は心臓を失った。私は床に伏しながら母の心臓が奪い取られる様を見届けそれが私の体内に入り込む様を動かない眼で最後まで見届けていた。彼女は私を抱きかかえ、大粒の涙を流した。残された僅かな時間で最後にぬくもりを感じようと……その時、白魔女の襲撃を受けた。彼らは白水晶で彼女を監視し、討ち取る機会を今か今かと伺っていた。その襲撃に激高した彼女は空間を捻じ曲げ白魔女をいばら魔法で雁字搦めにし、生気をすべて吸い取った。
その中で1人生き残った者が最後の力を振り絞り光の剣で私達を貫いた。
彼女の鮮血が私に降り注ぎ私の自慢の髪が赤く染まった。さらにその血は体内に染みわたり、まるで血管が張り巡らされたように全身を駆け巡った。その途端全身が脈打ち、身体が熱くなる。彼女は私を優しく抱き抱え、最後の力を振り絞りある呪文を唱えた。その瞬間私の身体は弾けたように稼働した。
気がつけば私はハサミで生き残った魔女の首を跳ねていた。鮮血が頭部があるべき場所から溢れ出て床を染めていた。小柄な身体が動く喜びと同時に目の前に広がる非現実的な光景に頭を悩ませた。人形である私にも気づけば感情が
宿っていた。流れ込んでくるレイナの憎悪、そして悲しい過去が流れていた。
そして私の産みの親……彼女の憎悪は空間を歪め現世と死後の世界の間に独自の世界を生み出した。
彼女の悪霊が住まう世界、そして彼女は私に名前を与えた。『レイラ』とそう名付けた。名前は私と彼女を結び付けそれが私を縛り付けた。彼女のいう事は絶対……それが私をこの世界に縛り付けた。
私は願った。いつかこの負の連鎖を断ち切り彼女の呪縛を解いてくれる人物が現れることを……それまで私は人を殺し続けるのだ。どうか私達に安らかな
眠りをもたらすその日まで……
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