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玄関のベルを鳴らすと、インターホンからかわいらしい声が返ってきました。
『はーい!』
「おはようございます、マカベ家政婦センターのイズミと申します。家事代行のご依頼を受けて参りました」
『はいはーい! ちょっと待っててねー!』
「かしこまりました」
合鍵はあらかじめお預かりしているのですが、せっかくなのでしばらく待ちます。やがてドアが開き、中から出てきたのは小さな女の子です。
「はじめまして、イズミです」
「こんにちはー!」
「はい、こんにちは」
何だかこちらまで元気になってきそうなご挨拶。今回のクライアントはこの子のご両親ですが、「変わった子なので、どうか上手く合わせてやってください」とのこと。今のところそう変わった様子もありませんが……。
女の子のあとについてリビングへ。ちょくちょく振り向いて見せる笑顔が愛くるしいです。それにしても、とても大きなお家です。
「お名前は何ていうんですか」
リビングに続くドアに手をかける女の子に尋ねます。
「ルナ! よんさい!」
「ルナちゃんですね、よろしくお願いします」
もちろんクライアントからお子さんのプロフィールは伺っていましたが、たとえ子ども相手でも──いえ、子ども相手だからこそ、コミュニケーションは大切です。お世話を仰せつかった身ですから、なおさらに。
「うん! あとね、あっちがリナおねえちゃん!」
リビングの向こう側を指差してから、ルナちゃんはその方向に走っていきます。そこには、
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
──なるほど、と思いました。
元気過ぎるくらいなルナちゃんと、落ち着き過ぎているくらいなリナちゃん。このふたりのお世話は、ちょっと大変なお仕事かもしれません。
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