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それから一ヵ月ほど、私はルナちゃんとリナちゃんのお世話をさせていただきました。その間クライアントは一度もお帰りにはならず、心配で堪らなくなった私は、ある日から、二人を寝かしつけてから帰ることにしました。
「イズミさん、おやすみなさい!」
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
少し終業時間を過ぎてしまいますが、これくらいどうってことはありません。二人が眠りに落ちる様子を眺めていれば、それだけで私も幸せですから。
今日もいろいろなことがありました。ルナちゃんとリナちゃんと三人でお掃除をして、そのあとは映画を観て……お夕飯は甘口のカレーを作って、お風呂では──。
──いけません、うたた寝してしまったようです。時計を見ると、二十一時を回ったところ。長くは寝ていなかったようですが、それでもクライアントの家で居眠りなどもってのほか。
起き上がって急いでリビングへ戻りましたが、クライアントは今日もお帰りが遅いようで、誰もいません。手早く身支度を整えて、不必要な照明を消灯、火元を確認、戸締まりを確実に。本日もお仕事終了です。
『イズミです。本日の勤務を終了させていただきます。恥ずかしながら居眠りをしてしまい、ご連絡が遅くなりました。たいへん申し訳ございません。本日もご利用ありがとうございました』
開始時と終了時にそれぞれクライアントへご連絡を差し上げているのですが、最初こそ「よろしくお願いします」「ありがとうございました」と返信が来ていたものの、だんだんとその頻度が減って、ここ最近はほとんど返ってこなくなってしまいました。
余計なお節介かもしれませんが、ルナちゃんとリナちゃんのこともありますし、今度泊まり込み勤務のご利用を提案してみようかと思います。
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