水時計

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 カイトは気にするなとでも言うように、私の手から使用済みの濡れたタオルを静かに奪い、ビニール袋に入れてから鞄に仕舞った。 「……ありがとう」 「いや、いい。今日はどうしてもミナモに会いたかったから。僕が呼んだ所為で、足が濡れた」 「何か用だったの?」  カイトはまた声もなく笑い、私にメニューを差し出した。 「まあ、のんびり話そう。好きなものを頼んで」 「じゃあ、ホットパイン」 「ここの人気メニューだね。──注文お願いします」  奥に声を掛けると、メイドロボットがすぐにやってきて私の注文したホットパインのカップを置いていった。とてもシステマティックで、迅速な対応だ。ここに人間は客以外いない。 「さてと本題。僕が何故ミナモと会って話をしたかったのか、最後まで聞けばわかるだろう。これからするのは、時計の話だ」 「時計? 時計って、時を刻む時計よね」 「そうその時計のことだ。ただしそれは、ミナモの知っている時計とは少し違うかもしれない」  カイトは窓の方に顔を向け、降りしきる雨を眺めながら何かを考えているようだった。私は言葉を急かすことをせず、ホットパインに口をつけながら辛抱強く待つ。
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