水時計

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 さらさらと私の頭上に降り注ぐ雨が、傘を濡らす。  私が生まれてからの記憶で、この雨が止んだことは一度もない。歩きながら水で満たされた空を見上げ、すぐに前を向く。ここをまっすぐ行った突き当りの店で、幼馴染であるカイトと待ち合わせをしている。相変わらずの雨がもし止むことがあったなら、それはいつだろうか。くだらないことを考えていたら何かにつまづいた。 「あーあ……」  履いた長靴の中に水が入り、ぽちゃぽちゃと音を立てる。一度道の脇に寄って長靴を脱ぎ、水を捨てる。ひややかなそれは私の足を濡らし、じめじめと不快な気持ちにさせた。 「遅いよミナモ」  紅茶を飲みながら待っていたカイトは、ふるわない私の表情に気づいてその原因を瞬時に探し出した。足元を見て声もなく笑みを浮かべ、自分の鞄からタオルを取り出すと私へ寄越す。 「拭いて」 「ありがとう」 「この雨の街で、ミナモは何年暮らしている? 歩き方が下手だね」 「ちょっとつまづいて……」 「怪我はなかったかい?」 「それは大丈夫。タオル、綺麗にしてから返すね」
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