朱夏昇る

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朱夏昇る

バキ、と鈍い音が鳴った。 この時期の雷は珍しいものではないけれど、それでも身体のなかには少しの高揚感が生まれる。 雷の光、大粒の雨がぶつかる音。 シンとした町が騒がしくなって、私はこの時間が好きだった。 私の家はいつも静か。 過疎化が進む田舎町の、さらに外れたところにあるこの古い一軒家は、会ったこともない祖父のものだったと言う。 その空洞に、私はいつも1人。 昼も夜も働きに出ている母とは、会うことなく1日が終わる毎日。 来客だっていない。 私の元に訪れる人なんて、1人もいない。 『わ、落ちた?』 ずっと閉まりっぱなしのカーテンを久しぶりに開いた。 家から5分程度歩いたところにある山の麓、良くは見えないがぼんやりと不自然な光が、ジッと在るように見えた。 『…なに?』 興味を持たずにはいられなかった。 こんな日は外に出るべきでは無い、と頭で分かっていても、私は長靴を履きビニール傘を片手に家を飛び出していた。 どうせ、誰も引き止めてくれる人などいない。
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