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雨の夏、と呼ばれた今年の夏はどうやら終わったようで、
「ようやく夏が来た」と皆が嬉しそうだった。
例年よりも長く激しかった夕立は来なくなり、連日太陽が顔を出し続けた。
あの日、嵐が通り過ぎた後の紅炎の空は町中が見ており、撮られた写真や動画はSNSでも拡散され全国放送のテレビニュースでも取り上げられた。
先にも後にも、あんなにも美しい光景に出会えるのはきっとあの時だけだろう。
我が家のカーテンは再び閉め切られ、ゴミ袋や淀んだ空気が溜まった暗闇へと沈んでゆく。
嵐の中山にいた私を母は心配することはなかったし、長かった雨が終わり、母は家に帰ることは今まで以上に減っていった。
この数年、夏はもちろん他の季節も朱夏を想い続け過ごした。
それは今も、これからも___。
『…、』
壊れそうな扇風機のカクカクという音も、耽る私の耳には入ってくることはない。
夕立を求め、入道雲を探す日々はもう終わり。
取り残されて1人、瞼の裏には朱夏が焼きついており、一欠片も無くさぬようにと目を閉じ再生させることを何度も何度も繰り返している。
朱夏昇る
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