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「すまん。皆聞いてくれ」
皆の注目が集まった。
「青山の勤務は今日までだ。引継ぎもないから大変だろうが分からないところがあれば俺に聞いてくれ」
「え? 急ですね。もしかして青山さんあの事気にしてるの? 大丈夫、俺たち信じてないし」
佐藤は心配して尋ねてくれた。
「いや、その事は退職を早めるきっかけでしかない。元々俺と結婚するために退職する予定だったんだ」
こういう嘘は堂々とつこう。
「ええ?」
佐藤はこちらの予想通り驚いていた。
「まあ、つまり、青山は寿退社だ。以上、仕事に戻ってくれ」
「いやいや、以上じゃないですよ部長! どういうことですか? いつからですか?」
「まあ、佐藤がキューピットってやつだ。ありがとな」
「俺が? セクハラですか? 俺のセクハラが嫌で部長に聞いてもらっているうちにとか?」
「あはは。そういうのもいいな」
俺は心なしか気持ちが緩んだ。鈴木は驚きながらもどこかほっとしているようだった。
高橋は相変わらず冷静沈着に「そうなると思ってました」と言った。高橋の見抜く力には本当に敵わないと思う事がある。
青山は机を片付け皆にお礼を言って会社を後にした。
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