Ep.1

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幼いころから母の好みで私の髪は長く綺麗に切り揃えられていた。形が付くからと結ぶことも禁止され、市松人形そのものだった。 大人は市松人形みたいに綺麗ねと言ってくれたが、多くの子供にとって市松人形は怖い存在。そのせいで、私は学校の七不思議の一つになった。 夜な夜な着物を着た青山初が校内を歩き、出会った人たちを不幸に落としていくらしい。もちろん、私は一度も夜中に着物で校内を歩いたことはない。面白おかしく皆が作った話は、あっという間に広がった。 私に話しかけてくる男子はからかうため。賭けで告白してくる人もいたが、何故か告白した後、皆怪我をしていた。もちろん私は何もしていない。彼らが勝手に怖がってこけたりしただけなのだが、噂は噂を呼んだ。 勉強していれば、本を読んでいれば誰からも話しかけられず、誰の目にも映らない。映ったとしても私は教室に飾られた恐ろしい市松人形。 呪いの市松人形に恋する人なんていないし、恋されても迷惑なだけだ。 だから私は二次元に恋をすると決めた。二次元の世界なら永遠に一方通行。私の思いさえ彼は気が付かないし迷惑にすらならない。
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